【アイサポ防災コラム】その13:南海トラフ巨大地震の情報発信は?
おととし9月、内閣府の中央防災会議ワーキンググループが、「東海地震は現在の科学では確度の高い予測は出来ない」として、気象庁は予知を前提としてきた東海地震の情報を取りやめ、おととし11月から南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会としての運用が始まりました。
そして南海トラフ沿いの異常現象への防災対応検討ワーキンググループは今年1月、ガイドライン案をまとめて国に提言し、国は関係省庁と調整して3月29日に関係都府県に公表しました。
それによりますと、静岡県を含む南海トラフの東側、または西側でマグニチュード8クラスの地震が発生した場合、その南海トラフ沿いの異常現象に備えた防災対応について、南海トラフ巨大地震のおそれが高まったとして出される「臨時情報」に対応するため、自治体と企業向けの対策のガイドラインとしてまとめられています。
マグニチュード8クラスのプレート境界型地震が起き、後発(こうはつ)地震=続けて起きる地震の発生も懸念される場合を「半割れケース」と呼んでいますが、ガイドラインで自治体には、後発地震が起きてからでは津波避難が間に合わない沿岸部などを「事前避難対象地域」に設定して、国の呼び掛けで避難勧告や避難準備情報を出すことを示しました。
親類や知人宅への避難を基本としていますが、それが難しい住民には地元自治体が避難所を確保することや、避難対象地域の学校には臨時休校などの対応を検討してもらうとしています。
また南海トラフ沿いでマグニチュード7クラスの地震が起きたり、ひずみ計で異常が観測されたりした場合も「注意」の対応を促すこととしています。
今後1年かけて各自治体は、住民が事前避難する地域の選定など、地域防災計画の改定を進め、2020年度中の本格運用開始を目指すことになります。
そして気象庁は、「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)」を「南海トラフ地震臨時情報」に名称変更し、ガイドラインを踏まえて「警戒」や「注意」を付け加えて異常現象の評価結果を発表することを決めました。
しかし警報や注意報が出されても空振りになるケースもあれば、情報がないまま突然巨大地震が発生する恐れもあります。
このため、津波避難施設の整備や建物の耐震化、家具の固定などが重要になります。
(文:防災アドバイザー 郷 隆志)