【アイサポ防災コラム】その51:避難する? 避難しない?
気象庁は6月14日に静岡県を含む東海地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。平年より8日遅く、昨年より1日遅い梅雨入りでした。
これからの季節、特に梅雨末期の集中豪雨や台風が心配です。そんな異常気象時に出される防災気象情報に伴う避難情報をどのように解釈しますか?
避難とは「難」を避けること。洪水や地震が起こっても何の心配もなかったら、避難する必要は有りません。命に危険が及ぶ恐れがあるときに避難の必要があります。
2009年8月9日、兵庫県佐用町で20人が死亡した豪雨災害は、佐用川支流の幕山川沿いにある町営幕山団地の住人などが、夜8時前に自主避難を決断しました。しかし幕山川に架かる橋を渡り、対岸にある避難所になっている町立幕山小学校に向かって暗闇の中を避難した家族たちは、普段はわずかな水量しかない農業用水路の濁流に流されて6人が死亡しました。町営幕山団地は高台にあって避難の必要はなかったのです。
犠牲となった5人の遺族が、死亡したのは避難勧告の遅れのためとして、町に約3億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁姫路支部は「町が災害の発生を予見することは難しく、責任は認められない」として、遺族側の請求を棄却しました。
今では当時と比べて防災気象情報の精度も上がり、行政の防災レベルも向上してはいますが、自治体から出される土砂災害や洪水災害に対しての避難情報等は、何々地区全域の何人にというように出されます。しかし地域全員が避難しなければならないと思うのは大きな間違いです。むしろ自宅が高台やマンションの高層階などで災害への心配が無い場合は、避難する必要はありません。在宅避難=自宅の安全な部屋などにいれば良いのです。
どうしても避難しなければならない危険予想地域内にお住まいの場合は、一刻も早い避難が必要で、視覚障害者などは警戒レベル3の「避難準備・高齢者等避難開始」で、本降りになる前に避難を完了して下さい。避難所は既に満杯で入れないことも考えられます。
遠くの避難所に行くよりは、安全が確保されているご近所や知人の家などに分散避難するのが良いでしょう。
命を守る為には、普段から近隣とのコミュニケーションが大切です。
そしてハザードマップや避難場所、避難経路を確認しておいて下さい。
(防災アドバイザー 郷隆志)