【アイサポ防災コラム】その20:静岡県管理の全河川に浸水想定区域設定へ
10月12日に伊豆半島に上陸した大型で非常に強い台風19号は記録的な豪雨となり、静岡県内でも総雨量が天城湯ヶ島で760ミリ、梅ヶ島で631ミリ、御殿場で576.5ミリを記録し、氾濫など浸水範囲は去年7月の西日本豪雨を超えました。
1ヶ月経った11月12日時点で、全国71の河川140ヶ所で堤防が決壊、16都県の285河川で川が堤防を越え、死者は静岡県の3人を含む92人、3人が行方不明者となっています。住宅の浸水家屋は静岡県の2743戸を含む8万5300棟余にのぼり、崖崩れや土石流被害は20の都県884件に上っています。土砂崩れ箇所で土砂災害警戒区域等に指定されていない箇所が複数ありました。
気象庁は台風19号上陸前日には、狩野川台風に匹敵する大災害が起きる恐れがあると何度も強い調子で警戒を呼び掛けていました。
その狩野川台風とは昭和33年9月21日、静岡県を襲った台風22号のことです。100年に一度と言われた猛烈な勢力で、中心気圧930ヘクトパスカルの超大型だった上、秋雨前線を刺激して天城湯ヶ島で1時間120ミリ、総雨量は689ミリの豪雨となりました。1269人が犠牲となり、全壊や流失家屋4300棟、浸水家屋は約50万棟の甚大な被害をもたらしました。
土砂災害や防災情報に詳しい静岡大学の牛山素行(うしやまもとゆき)教授が、今回の台風19号で被害が出た静岡と神奈川、長野の3県の住民を対象に、インターネット上でアンケートを行い、10代以上の男女1050人から回答を得ました。
「台風が上陸する前に自分の住む市町村で被害が出るとイメージしていたか」の問いに対して、イメージしていたと回答したのは静岡と神奈川では、いずれも6割ほどだったのに対して、長野では3割ほどだったそうです。また静岡、神奈川、長野の3県の浸水のリスクが高い地域の住民に絞って「自宅が被害を受けるとイメージしていたか」と聞いたところ、イメージしていたのは2割から3割ほどでした。
地球温暖化による気候変動で、今回のような豪雨災害の危険は増加すると予想されます。 静岡県はこのほど、政令市を除く静岡県管理の全ての河川に浸水想定区域を設定する方針を固めました。ハード、ソフトの見直しが急務と考えます。
(文:防災アドバイザー 郷 隆志)