【読書案内】第170回 芥川賞と直木賞が決定

 

こんにちは、貸出担当です。
先日、第170回芥川龍之介賞・直木三十五賞の発表がありました。
受賞作品を紹介します。

芥川賞は九段理江さんの『東京都同情塔』、
直木賞は河﨑秋子さんの『ともぐい』と万城目(まきめ)学さんの『八月の御所グラウンド』が受賞しました。
『八月の御所グラウンド』はデイジーが完成していますが、他は点字・デイジーともに製作中です。

『東京都同情塔』は、「犯罪者は同情されるべき人々」という考え方から、犯罪者が快適に暮らすための収容施設となる高層タワーが、新宿の公園に建てられるという未来の日本が舞台です。タワーをデザインした建築家の女性が、過度に寛容を求める社会や生成AIが浸透した社会の言葉のあり方に違和感を覚え、悩みながらも力強く生きていく姿が描かれています。

『ともぐい』は、明治時代後期、人里離れた山の中でひとり野生の動物を撃って暮らす猟師の物語です。
どう猛なクマと、執念深く追い続ける猟師との命を奪うか奪われるかの激しいせめぎ合いが臨場感あふれる描写で表現されているほか、時代が移り変わる中、人間的な暮らしと獣たちの生きざまの間で揺れ動く猟師の生涯が骨太に描かれています。

『八月の御所グラウンド』は、冬の都大路を駆け抜ける全国高校駅伝で先輩に代わって急きょ出場することになった方向音痴の女子高校生が、走っている最中に遭遇した不思議なできごとを描いた「十二月の都大路上下ル」と、8月に京都で人知れず開かれている草野球の大会に出場することになった男子大学生とある人物との出会いを描いた表題作の2編で、どちらも京都で起こる不思議な出会いと青春の物語をやさしい筆致で描いています。

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